国際医療ボランティア、現地でのコミュニケーションはどうしてるの?


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私は数年前ミャンマーで医療ボランティアをしていたことがあるのですが、現地では日本人スタッフとミャンマー人スタッフが一緒になって病院で活動するという環境でした。そんな話を人にすると必ず「言葉ってどうしてるの?」と聞かれて、そうだったな〜とやっと気付くんです。そういえば日本語とミャンマー語と英語をごちゃまぜで話してたな〜と。

ボランティアを始めたばかりのころは異国の医療現場でのコミュニケーションに驚きや苦労がありましたが、当然ながら毎日のことなのでいつしか当たり前になり、帰国後だれかに話をするときにはつい話し忘れてしまうテーマになっています。

みなさんの知りたい内容だと思いますので、今回はコミュニケーションについてお伝えしていきます。自分にとっても振り返ってみるいい機会な気がします。

書いているのは私です。
NurseVery運営者 安江夏希

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ミャンマーの病院でのコミュニケーション

私がミャンマーに行っていたのは、NPOジャパンハートの短期ボランティアや国際看護長期研修に参加していたからです。ジャパンハートでは、海外医療といえども主たるコミュニケーションは英語ではありません。私たちは日本人による日本の団体なのだから、日本語でいいんだという考えのもとです。自国の文化に誇りを持つとも言えるこの考え方に私も賛同しました。

ボランティア団体によっては参加条件に英語のスキルが問われているところが多いですが、ジャパンハートでは不問。その点では参加の敷居は低いと言えるでしょう。

スタッフ同士のコミュニケーション

だからといって全部日本語で話しているわけではありません。日本人はミャンマー語を覚え、ミャンマー人スタッフは日本語を覚え、お互いがお互いの言語を勉強して補完しあってコミュニケーションをとっていました。ジャパンハートに5〜6年関わってくれているミャンマー人看護師は、すでにネイティブ並みにペラペラでした。

ミャンマー人の中には英語を結構勉強してる人もいて、ミャンマー語がわからないときは英語も補助的に使ってみたりもしました。ミャンマー人の医師は日本語を頑張って話すより英語でサクサク話したいみたいで、よく大事な指示をペラペラ英語で話されて困りましたけどね。

患者さんとのコミュニケーション

患者さんと話すときは、よく使うおきまりのフレーズは自分でカタコトで頑張って話しましたが、複雑な説明や問診が必要なときはペラペラのミャンマー人看護師に通訳してもらっていました。

ミャンマーの患者さんはカタコトの外国人看護師を面白がってくれて一生懸命伝えようとしてくれ、受け入れは温かかったと感じています。でも聞き取りはかなり難しく、たくさん症状を説明してくれるけれど、お願いだから私の質問にYesかNoかで答えて〜という感じでよくお手上げ状態でした。

こうして思い返すと、日本で患者さんの話が途切れなくて困ってしまうというストレスはなかったかもしれません笑。患者さんたちは、カタコトの外国人相手には必要以上のことを話す気にはならなかったでしょう。。。

記録は英語

さすがに字を覚えるのはお互い難しく、記録は英語でした。ミャンマーの文字はなにやら丸ばかり。ひらがなカタカナ漢字を覚えろだなんて酷ですしね。

日本で医師が英単語と時々ドイツ語を混ぜながらカルテに書くような感じで、単語を並べて記録するスタイルです。単語が調べられればOKなので、電子辞書はみんな肌身離さず持っていました。

ミャンマー語の勉強方法

自己学習方法

私はどんな風に勉強したかというと、出国前に勉強したのは地球の歩き方の後ろに載っている挨拶と自己紹介程度でした。ほとんど現地に入ってから、現地人スタッフの真似をするのみでした。

英語を学ぶときには、子どもが言葉を学ぶように、耳で聞いて真似してしゃべって覚えるのが一番自然な学習方法と言われますが、私もその考え方に賛成なので現地勝負でしたね。

ポケットに入る小さなメモ帳は必須です。「これ使える!」と思った言葉はすぐにメモ、次の日から確実に使うを繰り返します。ミャンマー語はわりとカタカナで覚えて日本語発音で話しても通じやすかったです。指差し会話帳も持っていたけど、全て覚えても無駄が多いと感じています。

お互い教え合う楽しさ

手術が少ない時期には、お互いに日本語教室・ミャンマー語教室を開いて教えあったのもいい思い出です。理解しようと歩み寄ることが異文化理解だなとつくづく思いました。

とある夜勤の日、一人の患者さんが急に呼吸困難になるという緊急事態がありました。看護師の私と、看護師見習いのミャンマー人の子2人でかけつけたのですが、「(2階に泊まっている)医師を呼んできて!」=「セアジ コーペーバー!」ととっさに言えたときは「教えてもらっといてよかったー」とすごく思いました。一番記憶に残っているミャンマー語はこれです。

これから海外にボランティアに出るなら

いつか途上国に医療ボランティアに行きたいなと考えている看護師さんで、もし今英語に抵抗感があるなら、それは早くなくした方がいいですね。英語より現地語を覚えなければいけないので。

でもその方法は、勉強して苦手意識を払拭する方法だけでなく、目標設定を変えることもアリかもしれません。真面目な日本人はつい勉強から入ろうとするけど、もっと慣れに注目した方がいいと思います。

中学生レベルの基本的な言葉で大部分の会話は成り立つと言われますが、その通りです。文法を一から見直したりTOEICの試験勉強をするくらいなら、イングリッシュカフェに行ってたくさんおしゃべりをして「慣れた」と感じることを目標にする方が役に立つと思いますよ。

現地語を覚えられるかはそんなに心配しなくていい

聞いたこともないような現地の言葉を覚えられるだろうか?と心配する人も多いと思いますが、その心配はあまり必要ないです。なぜなら不思議なことがあるからです。

日本人は英語を話すことにはなぜか恥があるけれど、それ以外の言語ならないからです。日本人はみんながヘタに英語を少し知っているから、文法間違いや発音間違いになんとなく気づいてしまいます。聞き取れないことも気付かれてしまいます。だからどう思われるのか不安で話すのに恥ずかしく、ちっとも実践経験を積んでいけないのです。英語がペラペラな子でも日本人の中で話すのは嫌だと言います。

ところがだれも聞いたことのない言語だと、どんなに下手くそでも全く物怖じなく話すことができるし、「わからない」と言えるものなんです。だからどんどん使って覚えていけます。恥って面白い感情ですよね。

 

日本の医療現場でもコミュニケーションミスを防ぐことは難しいので、違う言語の地では大丈夫か?と心配するのも当然です。でも言葉が完璧でなくても、じゃあそれをどう補完すればうまくいくのか、考えればなんだってできるものです。言葉ばかりを恐れず、コミュニケーションそのものをもっと楽しみにして海外に出かけてみてください。