看護師はどうして社会でバカにされてしまうのか!?


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看護師がどうやら社会でバカにされている、看護師として数年働くとなんとなくそんな噂も聞くようになりましたが、それが真実だと決定付けたのは、看護師の転職支援サービスを運営する、とある会社社長の言葉でした。

「あのリテラシーのない奴ら」

・・・一瞬はショックでしたが、しかしこれを聞いて不思議と怒りの感情はなく、やっぱりそうだったんだとむしろ腑に落ちてしまいました。そしてそれからすぐに、なんでだろう?どうしたらバカにされなくなるんだろう?その謎解きをしてみたくなってしまったのです。

実は私は先月まで約2年間、全く異業種のwebの会社で働き、webメディアの編集、webサイトの制作ディレクターをしていました。上記の言葉はその間に聞いてしまったもの。来月からまた看護師に復帰するのでその前に、一度病院社会の外に出てみて気づいたことを元に、どうして看護師が社会でバカにされてしまうのか、その謎解きをしてみようと思います。

私が一般企業に勤めた理由

ちなみになぜこんな仕事をしたのかというと、その会社というのは夫が立ち上げた会社で手が欲しそうだったから手伝ったというのが理由ですが、根本的には経営に興味を持ったからと言えます。

私は看護師として病院で9年働き、その後NPOジャパンハートのプログラムでアジアでボランティア活動をしたのですが、そこで私が一番興味を持ってしまったのは団体の運営でした。非営利団体でどうやってお金を集めているんだろうか、どういう人が支えてくれているんだろうか、とにかくそれを知りたくて活動期間の最後の3ヶ月は事務局でボランティアをさせてもらいました。

ジャパンハートは代表の吉岡先生が一人で診療活動を始めたのが最初でしたが、たぶん「もっと多くの人を救いたい、続けたい」、そう願って組織を作って人とお金を集めたのだと思います。そんな風に自分も、こうしたい!と思ったことを形にできるようになりたいと考えたわけですが、東京の事務局で少し社会を見て、それにはモノを知らなすぎる、バカすぎることを知りました。でも知っただけましと思って武者修行に出たのです。

よく看護師がバカにされること

ダサい!?

看護師は非常識だと言われることがたびたびあります。ひとつにはTPOに適した身だしなみを整えることができないとか。「看護師さんってね・・・」と、実際の声を聞いたことがあります。それだけでなく、なんか足元だけダサいんだよね、とか、髪のまとめ方でわかるよね、とかも。適しているかどうかだけでなく、センスがあるかどうかも評価されるんですよね。

きれいにしている看護師だってたくさんいるしそんなことない!と思っていたのですが、東京のミッドタウンに入っている大企業にお邪魔したときにはあまりにもビジネスウーマンたちが美しすぎて唖然としました。相手に失礼でなければいいだけでなく、やっぱりこういうセンスからもお里が知れるというか、例えば何か発言をしくじると倍で評価が下がるということなのかなと、なんとなく惨めな思いをしました。

ちなみに企業に初めて連れて行ってもらったときには、名刺交換をする際に「ひとつひとつ教えるけど、まずコートを脱ぎなさい」と怒られました。服をいつ脱ぐというタイミングもあるのですね、苦い思い出です。

メールが下手!?

看護師は仕事のメールなんてほとんどする機会はありませんが、ちょっとした機会で非常識がばれてしまうのは事実です。私も会社に勤め始めてからわからないままビジネスメールをすることになりましたが、相手の返信を見て日々学んだものです。

しばらくしてから看護師とやや固いメールを交わすと、もともとの自分のメールスキルを目の当たりにしたのです。「お世話になっております」「よろしくお願い致します」の一言がないとか、改行を全くしていないとか、そんな小さなことですが、あーこんなに幼く見える文面だったのかと。ちょっとしたルールを知っているか知らないかだけですが、挨拶すら知らない人のように映ってしまうんですよね。恐ろしいです。

いい鴨!?

看護師といえばお給料はそれなりによく、でも忙しくてなかなか使う暇がない。だから「ご褒美」という名目で時に大きな買い物をする特徴があります。そんな看護師を狙っている商売人がたくさんいるのです。

もちろん看護師は自分の欲しい物やサービスを買っているだけですが、商売のテクを知らずに余計な買い物をしている可能性は大いにありです。そうでなかったとしても、仕組みをわかっていないお客さんは商売人から見るといい鴨に見えるのです。

最初に述べた転職サービスの社長も商売を知らないという点について、特にリテラシーがないと言っていたと理解しています。自分が損をしていなければいいのですが、購買行動、店員との交渉などから幼く見られてしまう事実があると認識しています。

 

看護師は学生の時から医療を学び、現場に出てからもさらに必死で毎日学び、何もサボっているわけではない!もともとバカの集まりなわけではない!そんな風に言いたくなるのですが、バカにされてしまうのは病院社会が特殊だからだと思います。ビジネス社会に属する人が圧倒的に多いので、そちらの社会が常識ということになってしまうのです。

病院社会の特徴

では病院社会はどんなところが一般社会と違うのでしょうか。ひとつは、自分の務める病院から外に出ることがあまりないことです。服装がイマイチというのも、自分たちの病院内でそれなりなら批判されることはないからです。他社の社員と打合せをする、しかも商談が上手く運ぶようにと思うと身だしなみひとつ取っても気を使うものなのです。そういう機会に恵まれず、つい機能性を重視してしまうのでダサさとして映ってしまうのでしょう。

他社の人と関わらないということは、ビジネスメールをする機会もありません。メールなんていうものはちょっとしたコツと経験だけなので、ただ機会がないというだけでバカにされてしまう残念な事態となっています。

しかし最大の特徴は、商売の要素が少ないことだと言えます。世の中の多くの営みは物やサービスを売ります。そのためにお客さんをどう集めるか、値段をいくらにするか、どう商品を改良するかなどなどを考えますが、病院の場合、医療メニューは国によって値段が決められ、お客さんである患者さんはメニューを選びません。もちろん病気の説明、治療の説明を受けますが、病院ごとに比較して決めたり、値段表を見て決めたりはしません。ほぼ言いなりです。

さらに言うと、人の購買行動には、行動ラインと苦痛ラインがあり、苦痛が大きくなれば行動力が大きくなるというセオリーがあります。営業のテクニックとして苦痛を認識させて行動のハードルを下げるというものがありますが、患者さんの場合苦痛をすでに持っていて病院にやってきますので、サービスを提供するのに苦労はしません。

病院の経営陣は当然患者さんをお客さんとして見て、また国を投資家と見て考えているでしょうが、看護師一人一人に経営の意識はほとんどないですよね。利益や損失をあまり考えなくていい社会なので、サービスを売ることに伴う知識を身につけなくていいということになります。また他の病院を競合として意識することがありません。そこがビジネス社会から見ると特異に映ってくるのだと思います。

バカにされないために

論理思考を鍛える

服のセンスやメールスキルなんてたくさん見て経験しないとどうにもならないことだと思いますが、どうにかできるのは話し方ではないでしょうか。常識を知らないと言っても、相手の状況を想像して論理的に質問ができればOKなわけだと思うのです。私がビジネス社会に出て痛感したのは、論理性がない人は徹底的にバカにされるということです。

医療現場のあらゆるものはシステム化され、看護師が考えなくても仕事ができるようになってきています。そもそも事故を起こさないためにとか、効率化のためにと、良いことを狙ってシステム化されてきたはずなのに、その代償は看護師がロボットになるというものでした。看護診断は論理的でないとできないはずですが、恥ずかしながら自分も含めできていない人が多いのが現状ではないでしょうか。

とりあえず話をするときにつじつまを合わせることを意識するだけでも違います。女性看護師に多いのが、意図も結論もなくただ頭に浮かんだことを垂れ流すように話すこと。主語と述語が合うように、話し始めたテーマが完結するように、それを意識するだけで頭の中が散らかりません。常識を知らなくても論理的で考えられた話し方ができることが、非常識と烙印を押されることを回避できる策だと思うのです。

謙虚な姿勢

どこの病棟にも一人はいると思いますが、数年働くと偉そうになってくるお姉さん看護師がいますよね。医師やメーカーの営業マンに対して偉そうな態度をとる人を見るとアダルトではないなと思います。いくら偉そうにしていても、大人な振る舞いができない人はバカにされてしまうのは当然ですよね。たとえ相手がおかしなことを言っているとしても感情的に振る舞うのではなく、したたかに演じられる賢さがないといけません。

人命に関わる尊い仕事をしている看護師。給料も悪くない。それに誇りを持つことは絶対に必要ですが、自分たちだけが尊い仕事をしているわけではないとよく心得た方がいいです。

私が会社に勤めて大きな収穫だったと思うことは、何人もの経営者の方にお会いして、世の中こんなに頭のいい人がたくさんいるんだと知ったことです。自分は謙虚なつもりでいましたが、やはりやや思い上がっていましたね。そんな自分が打ちのめされて本当によかったと感じているところです。

病院以外の社会を知ろう

バカにされないためにとちょっと斜めから話してきましたが、そのアプローチでなくても、患者さんを理解しようと務めるなら世の中の人のことをよく知った方がいいという考え方ができます。接遇研修等で患者さんへの言葉遣いを習ったりしますが、習わなければできないのは、その患者さんが社会でどんな役割を果たしている尊敬すべき人なのか想像が及んでいないからです。

先日祖母が初めて入院をしたのですが、手を顔の前にやり「こんなところまで顔を近づけて話してくるんだよ」と不快だったことを教えてくれました。医療者がよくする行為ですが、ベッドに横たわる高齢者をキャラクターのように勘違いしていないでしょうか?もしあなたの目の前のお年寄りがソフトバンクやトヨタの社長だったら同じようにしますか?

副業を禁止している病院がほとんどですが、今の時代にはマッチしないと私は思っています。ネットを通じていろんな業種の人と横のつながりを持ち、一緒に何か仕事をしていろんな人と関わるべきです。看護師もどんどん病院の外に出ていかないと取り残されていく、そんな危機感を持っています。皆さんはいかがでしょうか?