看護師1年目から手術室を希望してもいい?学生のうちに勉強しておくことは?


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私は看護学校で国際看護の授業を非常勤講師として担当させていただいていますが、毎年各クラスで必ず聞かれることがあります。

それは、授業の国際看護の内容に関係なく「手術看護って大変ですか?1年目から手術室ってどうですか?」というもの。

はじめに「私のキャリアは新卒からずっと手術室でした」「手術看護が一番好きです」と自己紹介するので、不安な学生さんの心をつかむのでしょうね。

また、手術室を希望することはもう決めていて「学生のうちにどんな勉強をしておいたらいいですか?」という質問も時々あります。

きっと同じような悩みを持って不安を感じている学生さんが全国にいるだろうと思いますので、このサイトから発信することにしました。

書いているのは私です。
NurseVery運営者 安江夏希

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目次

手術看護の実態がよくわからないから不安…

看護師1年目でも手術看護は務まるか

新人手術室看護師が大変と感じること

よく言われる手術看護の大変さと実際は違うこと

学生のうちに何を勉強しておくと役に立つ?

手術看護の実態がよくわからないから不安…

手術看護は看護の中でも特殊な分野です。大学や専門学校で手術看護について習うのはほんの少しだけ。清拭や採血など基本の看護技術はほとんど使いません。最近は手術室実習も1日見学するだけという学校が多いのではないでしょうか。

だから、興味はあるもののその実態をつかめず、挑戦するのに自信がないという学生さんはきっと多いのだと思います。

私は新卒で希望して手術室に配属になり、結局9年間続けました。その後離島の病院のICUや、慢性・終末期病院での看護を経験し、さらにはミャンマーやカンボジアでの手術看護も経験しましたが、いろいろな経験を経た今でも一番好きなのは手術看護と言うことができ、あのとき希望しておいてよかったと思っています。

もし病棟勤務になっていたら、数年たっても手術室に異動することはできなかったかもしれません。ちょうど7:1看護を実現するために病棟看護師の人員確保が急務になった頃でしたから。

だからみなさんのチャンスが流れてしまわないように、不安を減らせるように解説していきますね。

看護師1年目でも手術看護は務まるか

謎の手術看護ですから、自分が手術室看護師になって活躍できるイメージを持ちにくく、本当に務まるかどうか不安だと思いますが、私の回答としては「時間はかかるが問題ない」です。

結局、病棟から異動してきた人も同じ苦労をします。ただ、新人とそうでない人との差は、社会の秩序を知っていたり、病院のシステムを知っていたり、自分自身のことをよく知っていたりすることです。だから全体を把握しやすくうまい立ち回りができたり、ストレスとうまく付き合うことができるので、その分スマートに見えるでしょう。

もしド新人の自分と病棟からの異動者が4月から一緒にスタートしたなら差を感じて焦るかもしれませんが、自分には務まらないのでは?と自信をなくす必要はありません。新人から立派に育っていく人を何人も知っています。

では、新人手術室看護師特有の苦労とはなんでしょうか。

新人手術室看護師が大変と感じること

「手術室ってどうですか?」と聞かれたならば、正直楽ではないと答えます。大変です。でも大変な事実を知ってさえおけば準備ができますし、それにこれらの事実は多くの人が乗り越えていけることなので、ここではしっかり書きますね。

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下積み期間が長いこと

基本を一通り網羅する下積み期間としては、病棟看護より長くなります。それは病院の診療科の数が多ければ多いほど長くなります。

目安として紹介すると、私の場合は12の外科系診療科がある病院でしたが、1年強ですべての診療科の器械出しを経験でき、2年目ですべての診療科の外回りを経験でき、3年目でようやく少しわかってきたという感じでした。4〜5年目で後輩指導を行いながらやっと理解ができてくるといった状況です。

一方同期の病棟看護師は、1~2ヶ月経つと夜勤をやるようになり、少ない人数の中の一人として責任感を感じながら早くも自立していきます。1年もすればチームのリーダーとして全体を見渡すようにもなります。

同期の友人と比べてしまうと、なかなか達成感や自信を得ることができず辛くなる時があります。

体調の調整

これは人によりますが、働き始めたばかりのころ、血圧の調整が難しくて立っていられない人をときどき見かけます。一定期間経っていても初めてのオペで緊張度が高い時などにも起こります。同じ立ち仕事でも動いていれば問題ないのですが、手術室のように直立不動で見学したり器械出しをするシーンが多いとそうなりやすいですね。

まだ見学しているうちならいいのですが、器械出し看護師として一人の人員としてカウントされた後だと、交代要員の調整で迷惑をかけてしまいます。さらに、一度失敗すると余計に次も緊張して自律神経を乱してしまう可能性があります。

女性はホルモンの周期により不安定な時期もありますし、自分の体の強いところと弱いところを早く把握して調整することが必要になってきます。

ちなみに私はときどき低血糖で立っていられなくなることがありました。夜中に緊急で呼び出しがあったときに陥りやすいことがわかりましたので、休憩室の冷蔵庫には必ずお菓子やジュースをストックしておいて、手洗い直前にさっと口にするように調整していました。

低血糖対策ではありますが、不安対策の意味の方が大きかったかもしれません。「今日は食べてない、どうしよう」と不安に思うと、体調が悪い気がしてきてしまうものなんですよね。

人間関係

人間関係はどこの診療科でも同じです。合わない人はどこにもいます。だから特別取り上げることもないかもしれませんが、事実、手術室の人間関係は良くないという話はよく聞くことです。冷静に分析してみると、人間関係が通常より悪化しやすい状況が手術室にはあると言うこともできます。

一番皆さんが気にする点だと思うのであまり怖がらせたくはないのですが、手術室の特徴を知っておけば対処方法はいくらでもあると思いますので「難しい」とは言わせていただきますね。こちらのページで詳しく解説していますので参照してください。

>手術室の人間関係はなぜ良くないと言われるの?原因を徹底分析

よく言われる手術看護の大変さと実際は違うこと

次に、よく言われる大変さと実際は違うなと思うことがあるので、それもご紹介しておきます。次のようなことはそんなに心配しなくて大丈夫ですよ。

Q. 血を見たり中を見るのって大丈夫なの?

大丈夫です。私は学生のときまでは実はそんなに大丈夫ではなかったんです。手術の動画を授業で見たときに、見ていられないと思うことがありました。でも実際手術に立ち会ってみるとすっかりそんな気持ちは忘れて問題ありませんでした。

先ほど倒れないようにするのが大変という話をしましたが、調子が悪くなる人は血を見て倒れるわけではありません。そういう人は今のところ見たことがありません。

手術は、術野だけ露出して、あとは全身に清潔な布をかけますので、人がもろに切られているというような印象は与えません。術中は小さな術野のさらに細部に集中するので、一般の方が想像するような気持ち悪さはありません。

Q. 器械を覚えるのが大変?

これも、間違いではありませんがそれほど大変なことではありません。それよりも、今術者は何をやろうとしているのか理解し、その役割を果たせる器械は何かを選択することが難しいのです。器械の名前を覚えること自体は難しくないです。どうもこのあたりの認識に相違がある気がするので説明させていただきました。

いわゆる女頭だと器械の分解や組み立てが難しいと感じることもありますが、本当の悩みどころは違います。その器械はいつどんな状況で使うのかを知るのが大変になります。

そのためには、手術の手順を単純に暗記するのではなく、よく術野を見て、どこを触っているのか、何をやっているのか、を常に自分に問いかけて考え、知識を貯めていくことが必要です。

学生のうちに何を勉強しておくと役に立つ?

大変なことはいろいろあることはわかってきたけれど、やっぱりやってみたい!とまだ思ってくれている学生さんに、学生のうちから準備できる勉強をアドバイスしておきましょう。

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解剖

どの手術にも解剖は必要な知識になります。早くから解剖の勉強をしておけばあとあと負担が減ることは間違いありません。

ただ勉強の仕方が重要です。解剖の本の、各部位の名称にマーカーを引いて覚えるやり方はあまりおすすめしません。

簡単なイラストでいいので、自分で書けるようになるといいです。たとえば私が書く心・血管系の解剖図はこうです。

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かなり不細工でびっくりしましたか?繊細とは程遠い図ですが、このくらいの粗さでいいので(いいのかな!?)一筆書きくらいの勢いで描けていけるといいと思います。これに手術の手順を加えていくとこうなります。

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これは実は体外循環のカニュレーション手順を覚えていくのに適した図だったのですね。余裕があれば、解剖図のイラストを描いたら手術の手技書を見てみて、手順を追って器械や糸の種類などを書き加えていってみてください。

整理整頓

あなたの部屋はきれいに片付いていますか?机はきれいですか?パソコンのデータはきれいに整理されていますか?

有能な手術室看護師を見ていて思うのは、みんな整理整頓が上手いということです。器械台は常に美しく、衛生材料も常に整然と準備されています。何が必要で何が必要でないかを常に把握しているので無駄がなく美しいのですね。

これは単に物理的スペースに余裕があるというだけでなく、思考にも余裕があると言うことができます。

普段できないことは仕事でもできません。身の回りの整理整頓は今からできる訓練になるでしょう。

ストレスとの付き合い方

今回は手術看護の大変なことをお伝えしてきましたが、それを乗り越えていけるかどうかは、上手くストレスと付き合えるかどうかがポイントです。そのため今できることとしては、自分のストレス反応をよく知ること、そしてストレス解消法を見つけておくことです。

強いストレスを受けたときに、自分にどんな反応が起こるかを把握していますか?食べれなくなる人もいますし、よくしゃべるようになる人もいるでしょう。人それぞれ違うはずです。自分の反応を知っていると、あ、今ストレス感じているな、もう少しエスカレートしてしまうと怒りに転じてしまうな、などのように、早めに気づくことができます。

そうして早めにストレス反応をキャッチできたなら、もちろん早めのストレスの解消が得策です。解消法も人それぞれ違いますよね。人に話すことですか?歌を歌うことですか?家で映画を見ることでしょうか。いろんな方法を試して自分に合うものを知っておくとよいでしょう。愚痴を言い合う友達が必要なら今から関係作りをしておくとおいいですね。

また感情ですぐに反論しないことも大事なポイントだと思います。

一番やってはいけないことは、感情で反論することです。私が新人のころ、理不尽に怒られたことに腹を立て、「意味がわかりません」と逆切れしたことがありました。結局、火に油を注ぐ結果となってしまいました。しかし、全部自分が悪いと一人で抱え込みすぎないことも大切です。

一呼吸おいて、「わかりました」「すみませんでした」と丁寧に対応することが必要だったと思います。

引用元:ナースの転職知恵袋

どうでしょうか、心の準備は整いましたか?1年目からの手術室は大変なことはありますが、若いうちにたくさん苦労してたくさん学ぶのはいいことです。もし興味は持ったけれども勇気がなくてやめたのなら、別の仕事でちょっと上手くいかなかったときに、手術看護が残念な逃げ道となってしまうかもしれません。。。ですから、興味があるなら怖がらずに手術室に挑戦してくださいね。

私は手術室看護師さん専用の相談サロンも運営していますので、もし挑戦してみて上手くいかないなと感じた時にはサロンに来てください。直接お話しして解決策を探っていきましょう。

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