看護師の副業を認めるとどうなるか


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働き方改革と叫ばれ始めてから、少しずつ副業を認める企業が出てきています。とは言っても副業・兼業を容認している企業は未だ28.8%だそうですが(2018年10月12日リクルートキャリアの調査より)。生涯1つの企業に勤める、いわゆる終身雇用が当たり前だった昭和→生涯何度か転職するのが当たり前になった平成→生涯何度か転職して且つ複数の職を持つようになるであろう令和、こんな風に変遷してきています。

看護師として働いていると時々心が疲れてしまい、もっとお金が欲しいと思ったことがありませんか?バイトや派遣、夜のお仕事のことを夜な夜な調べて、でもどうせ副業禁止だし…税金でバレるし…なんてため息をつく経験をたくさんの人がしていると思います。

私は、病院に勤める看護師にも副業を解禁してみてもいいんじゃないかと思っています。副業を認めると私たち看護師はどうなるか?を考えてみました。

書いているのは私です。
NurseVery運営者 安江夏希

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なんで病院は看護師の副業を認めないの?

看護業務に専念してほしいから

普段の看護業務だけでもハードワークなのに、他の仕事まで行うと集中力が欠けるのではないか、勉強する時間が減ってしまうのではないか、人事としてはそんなところが心配だと思います。残業をしない努力をしているところなのに、逆に長時間労働、過重労働を助長させてしまうことにもなり、職員の健康を管理するが難しくなってしまいます。副業する余力があるなら業務時間内に120%のパフォーマンスをしてくださいねというところでしょう。

病院の印象を悪くするかもしれないから

女性が多い看護業界では夜のお仕事をしだす人を懸念するという点があると思います。日勤が終わったら夜のお仕事を週に何日かという働き方は時間帯が違うので取り組みやすいし、報酬も高いのでつい考えてしまいがちです。実際に看護師と夜のお仕事のダブルワークは聞かない話ではありません。コミュニケーションスキルや接遇など勉強できることがたくさんあっていいと思いますが、夜のお仕事に良い印象を持たない人もいます。特に病院で関わる高齢の患者さんはそう感じる方が多いでしょう。名前や顔が割れたら良くない噂がたってしまうかもしれないので病院としては避けたいでしょうね。

看護師に副業を認めるメリット

そんなデメリットがある中で、それでも看護師たちに副業を勧めてみたらいいと思う理由はこうです。

人の理解力が深まる

看護師も医者も人相手の仕事なのに、常識がなくて人の理解が足りないとよく言われます。なぜかというと高校を卒業してから同じ職種の仲間としかほとんどつるんでいないので、他業界の人のことをよく知らないからです。ぜんぜん違う仕事をしてみると、違う業界の人と交流することができ、さらには社会のこともそれまでより広い視野を持って見られるようになるでしょう。

看護の仕事で一番の肝は、何と言っても対象理解。この患者さんはこれまでどんな風に生きてきて、どんな価値観を持っていて、どんな風に生きて死んでいきたいと思っているか、それに沿って病気や怪我と上手にお付き合いできるようにサポートすることが仕事です。

「人」のことを想像して理解するためには、あらゆる人の”価値観データ”をたくさん自分の中に入れておいて、引き出して組み合わせてという作業が必要になります。人のビッグデータが看護の力になります。

副業という形で実際に自分が医療以外の分野で仕事をしてみて社会を知り、その周辺の人とたくさんからんでみることは、看護師のレベルアップに貢献できる可能性ではないでしょうか。

真面目に看護の仕事をするようになる

副業を認めるというのは実はシビアな側面のあるお話で、自分の本当の価値が測られてしまうものだとも思っています。

副業していいよと言われたらみなさんは何をしようと思いますか?なんでもやっていいよと言われると案外やること見つからないなんてことはありませんか?自分は社会に貢献できるどんな能力を持っているでしょうか。私だったら結局、時間を切り売りする仕事しかできず、看護師と両立できずすぐ挫折するのがオチでしょう。

最近大企業が副業を認め始めているのは、優秀な人材を確保したいからです。というのは、優秀な人ほど他から声がかかり、会社の枠を越えて様々な活動をします。勤めている会社に副業禁止と言われてしまうと活動に制限がかかるので、自由度の少ない会社には行かないでおこうと思われてしまいます。自由に社外で活動してもらっていいから、自社でもぜひ力になってください!という意味です。

そんなふうに病院からラブコールをもらえる自信のある人はどのくらいいるでしょうか。また、ひとつの病院以外でも広く世の中に自分の能力でいろんなものを生み出していきたい!というエネルギーのある人はいますか?他分野での活躍の目処がつけられなかった人は、きっと日々粛々と働き文句を言わなくなるのではないでしょうか。これまで築いてきた自分の専門分野を深めようと思い直せるかもしれません。

副業でなくても看護以外の活動をしてみよう

このように病院以外の世界に出てみると良い気づきが得られると思いますが、人事部はきっとこの先当分は看護師の副業を認める動きにはなかなかならないでしょう。だったら、なにも他企業への”就職”にこだわらなくても、報酬を得ないで活動する方法でも悪くないのではないでしょうか。ハンドメイドでアクセサリーを作って出店してみたり、音楽を作って自分でかってにYoutubeに上げてファンを集めてみてもいいですよね。本を出版するつもりでブログで執筆活動をしたり、エステを開業するつもりでボランティアで間借りフェイシャルエステなんかも面白そう。

私は手塚治虫先生の言葉が好きで「夢は2つ以上持ちなさい」というやつです。一つしかないと、その夢が絶たれたりうまく行かなかったりするとそれで終わりだけど、もう一つあるとそうはならないでしょ?って意味です。看護の仕事はとても大変で病んだコメントがたくさんネット上で見られます。一つしかないと辛いことが自分の全てになってしまいますよね。辛いことがあっても、自分には他の道もあるって思えるだけで心に余裕ができて問題に対処しやすくなります。嫌なことがあっても、今日の夜には、明日の休みには、他に考えなきゃいけないことがあるってなると、気が紛れて気分の落ち込みが少なくなります。

報酬という目的だけでなく、単純に1度の人生でいろんなことをして楽しむという目的でなにか別の活動をしてみてはいかがでしょうか。

でもやっぱり副業を認めてみてほしい

考えてみると報酬を得ないボランティアでも良さそうだしできそうですが、やっぱり…ここはひとつ収入を得ることにこだわってみるのってとても勉強になると思うので、ぜひ人事部の方には今後も検討してみてほしいと思うんですよね。

何より、報酬を得たほうが責任を持ってできるし、うまくいかないときや気分が乗らないときでもきちんと追い込まれるからです。自分の力で、自分の個性で、どれだけのお金を生み出せるのか、報酬という数字で明らかになり、身をもって実力を味わえることになるからです。仮に副業を認めても、きっと挫折する人の方が多くて病院の損にはならないだろうと思っています。

そして逆に副業制度を有効に活用できる数%の人は、きっと看護部に利益をもたらすと思います。病院での看護師の役割を超えてくる人材の可能性に期待して、だめだと言う前にやらせてみたらいい。私はそういう考え方です。