大学卒業後すぐに青年海外協力隊としてホンジュラスに出発。迷いはなし!


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藤田保健衛生大学 臨床検査学科 4年

佐藤哲郎さん

 

佐藤さんは藤田保健衛生大学の臨床検査学科を卒業したばかりですが、臨床経験をする前にJICAの青年海外協力隊に入り、ホンジュラスに派遣されることになりました。大学卒業後すぐにボランティア活動に出ると決めたのはなぜだったのでしょうか?迷いはなかったのでしょうか?決断に至るまでの経緯と出発前の今の気持ちを聞いてみました。

インタビュアー
Nurse Very運営者 安江夏希(看護師)

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安江:出発前の準備に忙しいときに、インタビューへのご協力ありがとうございます!(読者の皆さんにお知らせすると、佐藤くんはこのインタビューの前には運転免許証の更新に行かれていました。)

佐藤:いえ、まだ研修前なのでそれほど準備はしていません。とりあえず4月から2ヶ月、国内で研修を受けた後に派遣なので、まだ大丈夫です。

安江:佐藤くんは臨床検査技師になるために臨床検査学科で学んできた学生さんですね。今回は青年海外協力隊として感染症・エイズ対策の分野で派遣されるということで、合格おめでとうございます。

看護師さん向けのサイトを運営しているのですが、国際協力に興味を持つ看護師さんや看護学生さんにもきっと役に立つお話をしてくれると思ったので協力をお願いしました。今日はいろいろ教えて下さい!

佐藤:多くの看護師さんの要請案件は3〜5年の実務経験を求められますが、この分野はそこまでの臨床経験を持たない看護師さんでも合格できる職種です。僕の話が役に立てばうれしいです!

どうして医療に興味を持ったのですか?

安江:ところで佐藤くんはどうして医療の道に進もうと思ったの?

佐藤:僕、ウイルスに興味を持ったからなんですよ。あと人に求められる仕事に就きたいと思っていたんですけど、考えていったら医療だなと思いました。

安江:ウイルス!看護師のなかではあんまり聞かない理由だけど、ウイルスってどんなきっかけで興味持つの?

佐藤:高校生の時に「感染列島」っていう映画を見たんですよ。名前の通り感染がアウトブレイクする話で、すごい面白かったんです。妻夫木くんが医師で、檀れいさんがWHOのメディカルオフィサーでした。

それでウイルスの勉強をしたくなって医療の道を選んで、臨床検査科に入りました。特に、檀れいさんをはじめとするWHOの人がかっこ良かったんですが、WHOのメディカルオフィサーは感染症実地疫学等の専門性を身につければ、必ずしも医師である必要はないと聞いたのもあって。

どうして国際協力に興味を持ったのですか?

安江:映画がきっかけだったんだね。じゃあその後、どうして国際協力に興味を持つようになったの?

佐藤:大学に入ってみたら、思っていたほどウイルスの勉強ができなかったんです。日本にはそもそもそんなにウイルスがいないこともわかり、たくさん勉強できるのはやっぱり途上国だなと思って興味を持つようになりました。

あと、医療ボランティア団体のNPOジャパンハートの代表、吉岡秀人先生の本をたまたま手に取ったのをきっかけに、さらに引き込まれていきました。先生の講演会を聞きにいったり、学生団体HEART’sにも所属しましたね。国際保健医療学会学生部会にも所属して、情報収集しました。

学生のときに何か国際協力活動をしましたか?

安江:私と同じく吉岡先生の影響もあったんだね。早速行動しているみたいだけど、これまでに何か国際協力関係の活動をした?

佐藤:長期の休みはほとんど国際協力に関することに充てましたね。東南アジアをいろいろ旅して回ったり、ボランティア活動をしました。その為にバイトしてました。

安江:例えばどんなバイト?

佐藤:いろいろやりましたよ!イベント派遣や塾講師、ラーメン屋とかほっともっととか。

安江:なんかどれも似合う!想像できる(笑)

タイのマヒドン大学で公衆衛生の勉強

佐藤:短期でタイのマヒドン大学に公衆衛生の勉強をしに行ったのはよかったです。タイは同じ国内でも地域によって衛生環境の格差があるので、だからこそ比較研究がしやすいみたいです。大学主催の2週間のスタディーツアーみたいなものに参加して、いろいろ見させてもらいました。タイのプライマリヘルスケアの実情とか、HIV感染予防への取り組みとか。

ミャンマーの難民キャンプ支援

佐藤:あと、タイのミャンマーとの国境付近でミャンマーのカレン族の難民キャンプがあったのですが、そこにも行きました。キャンプ地にクリニックもあるのですが、先生も元難民だった人でした。

安江:難民キャンプも見てきたんだね。現状見てどう思った?

佐藤:国籍とか戸籍がないって、改めて大変なことなんだなって思いました。キャンプがもし解体されたら彼らが生きていくのは大変なんですよね。

たとえば仕事。難民キャンプのコミュニティーの中に高校や短大もあるんですが、それが社会一般に認められる学歴になるわけではないので、キャンプが解体されてしまうと外の社会では証明にならず、なりたい職業に就けません。また、キャンプ内の職業訓練所で理容師などの技術を身につけても、キャンプ外では認められず無職になってしまうのです。

あとタイでは難民の存在を認めていなくて、だから国連のUNCHRは直接介入できなくて、その間をNPOが埋めるように支援していました。国連が何でもできるわけではないということも知ることができました。いままで医療のことしか考えてなかったけど、いろんなことが密接にからんでいるんだなって思った体験でした。

安江:興味を持ってからすぐ動いてるね、濃い学生生活だったね。

どうして青年海外協力隊への参加を決めたのですか?

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安江:学生時代からいろいろな活動団体を見てきたと思うけど、どうしてJICAを選んだの?

佐藤:自分が主催した勉強会に参加してくださった講師に、JICAでボランティア経験をしてきた方がいました。しかも同じ大学で同じ検査科の先輩でした。JICAの名前はもともと知っていましたが、それがきっかけで興味を持ちました。

調べていくと、派遣前のサポートが充実していることがわかりました。2ヶ月研修期間があって語学や安全対策を学べ、ワクチンの接種プログラムもしっかりあります。現地では政府が住居を用意してくれるみたいで安心です。

臨床経験なしに卒業後すぐ参加することに迷いはないですか?

安江:私も他のたくさんの人もそうだと思うけど、国内である程度の臨床経験を積んでから行く人が多いけど、卒業後すぐに参加することに迷いはないの?

佐藤:ないですね!全然。

安江:同期の仲間ともスタート時期が変わってくるけど、そういうのも気にならない?

佐藤:ないですね!僕は最終的にWHO等の国際機関でパンデミックの封じ込めに携わるのが目標で、その為には海外の大学院を出たり、1-2年の途上国での実務経験や、英語以外の語学習得などが必要なので、その経験を早く積みたいです。JICAに行けばこれらの経験が手に入ります。

安江:日本の病院で検査技師として働くことはあまり考えていないんだね。

佐藤:今のところはそんなに考えてないですね。僕の好きなウイルスは日本にはあまりいませんし!それに、海外派遣中に親の体調が悪くなって帰国する隊員がいるということも聞いたので、親が元気なうちになるべく早くという思いもあります。

ご両親は海外派遣について何と言われていましたか?

安江:ご両親が元気なうちにということですが、ところでご両親は海外について初めから理解を示してくれた?何て言われた?

佐藤:実は許してくれたのかどうかわからなくて・・・

安江:え?大丈夫なの?

佐藤:母は大丈夫なんですけど、父が厳しくて。学生のときに初めてミャンマーに行った時にかなり心配されて、それからあまり話を聞いてくれなくなっちゃったんです。

安江:治安のことを一番心配されてるの?

佐藤:そうですね。あと、働いてからだったらなにやってもいいけどとも言われました。卒業後すぐというのもひっかかったみたいです。

そんな状態なんですけど許しを得る前に合格してしまい、電話で相談したんですが全く聞き入れてもらえず、何度電話しても途中で切られました。

安江:怒ってるねー!

佐藤:それで、次は手紙を書きました。話聞いてくれないので一方的に送りました。応募書類もとにかくなんでも送ってやれー!と思って。治安についてはどこのご両親も心配されるのでしょうね、JICAからご両親宛の説明パンフレットももらったのでそれも入れました。

安江:手紙攻撃!ちなみにどんな手紙を書いたの?

佐藤:人生計画表とか書きました。年表にして。で、活動に対する想いを綴りました。JICAの面接より父の説得の方が大変でしたよ。

安江:人生計画表はいいね!一時的な気持ちじゃなくて、きちんとビジョンがあることを示せると理解しやすいだろうね。

佐藤:それである日実家に帰ったら、、、机の上に地球儀が置いてあったんです

安江:その意味って!

佐藤:・・・なので、きちんと許してもらえたかどうかは未だわかっていないということです。

安江:お父さんなりのOKサインだねきっと!

佐藤:たぶん。

安江:もしさ、佐藤くんの娘が海外に出たいって言ったらどうする?

佐藤:娘ですか・・・。許さざるを得ないですけど、僕と何度か一緒に行ってからですね!

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現地ではどんな活動をする予定ですか?

安江:ホンジュラスに行ったらどんな活動をする予定ですか?

佐藤:デング熱、ジカ熱、シャーガス病などの感染症の予防啓発活動をします。でも最初の1年は言葉を覚えたり現地の活動を視察したりで、実際動けるのは2年目からと聞いています。

安江:啓発活動なら、学生時代のボランティア活動経験を生かしてやれそうだね。自信はあるんじゃない?

佐藤:自信があるので、その根拠のない自信をへし折ってもらいたいと思っています。うちのめされに行きたいんです。

安江:謙虚というか冷静というか、意外な答えだね。

佐藤:JICAの専門家にも、大したことできないと言われました。たった2年でなんとかなるなら、世の中とっくに良くなってるって。でも、それを実際に感じることが一番の勉強になるんだと思っています。現地と近い目線を持って、その後もっと学ぶことに意義があるんです。

JICAも、途上国の人のための活動ではあるけれど、同時に日本の若者を育てるための活動だと謳っています。だから面接でも「勉強させてもらいたいです」と言いました。

安江:自分にできるか自信がなくて踏み出せない人は、この考え方を聞いたらまず見に行ってみたい!と思えるかもね。

佐藤:燃え尽き症候群になる人って、「できるぞ」と思って行って、でもできなくて陥ると聞きました。だからふさわしいレベルのゴールを設定するといいと思います。

途上国でボランティアをしたいと思っている看護師さんにメッセージ

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安江:最後に、途上国でボランティアをしたいと思っている看護師さんたちにメッセージをお願いできますか?

佐藤:看護師免許って大きいと思うんです。海外で活動して帰ってきても食いっ逸れることはないじゃないですか。だから心配せずどんどん攻めていかれてはいいのではないでしょうか?

英語もできるに越したことはないけど、活動する国の言語は英語ではないことが多いです。勉強は現地でするのが絶対早いので、尻込みせず、とりあえず行ってみる!というスタンスで!

安江:今日はありがとうございました。では帰国後にまたお話聞かせて下さい!!