海外ボランティア活動後の進路どう考える?元ジャパンハート看護師さんにインタビュー


IMG_2399

今回インタビューさせていただいた松原若菜さんはNPOジャパンハートの長期看護研修に参加し、カンボジアで医療活動を行い今年1月に帰国された看護師さんです。帰国後約3ヶ月が経ちましたが、今後の進路に悩んでいるということでお話を伺いました。夢だった国際協力を経験し見えてきた次のフィールドとは…

書いているのは私です。
NurseVery運営者 安江夏希

img_natsuki_icon

>プロフィール

安江:松原さんお久しぶりです。長期研修お疲れ様でした。私が夏に看護師ツアーのアテンドとしてカンボジアに行ったときにお会いして以来ですね。日本の生活は落ち着きましたか?今何をしているんですか?

松原:派遣ナースとしていくつかの病院や施設で仕事をしています。帰国したときに安江さんに連絡してからもう3ヶ月が経ってしまいましたが、恥ずかしながらまだこれからの進路に悩んで前に進めていないんです。

安江:それボランティアやった人によくある悩みですよね。今日はじっくりお話しましょう。なにか少しでも光が見えればと思います!

なぜ国際協力に興味を持ちましたか?

安江:そもそも、国際協力に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

松原:愛知万博(2005年)に行って、赤十字が展示するパビリオンで活動報告を見たのがきっかけです。その時飢餓の写真などを見て貧困の現状に関心を持つようになりました。それまでは子どもが好きなので保育士になりたかったのですが、「役に立ちたい」という気持ちが芽生えて看護師になろうと思うようになって、同時に国際協力も意識するようになりました。

安江:私も愛知万博行きましたけど、何見たかあんまり記憶に残ってないです…

松原:私は記憶が赤十字のパビリオンしかないんです。他は覚えてないんです。

安江:よほど強烈なインパクトがあったんですね。

どうしてジャパンハートの長期研修プログラムに参加したのですか?

安江:看護師になってからはどんなところで働いたのですか?

松原:万博で印象に残ったので赤十字病院に就職しました。配属は救急です。

安江:日赤は国際協力活動が盛んですものね。

松原:でも日赤時代は毎日の仕事に精一杯でしたし、経験年数のある人が活動に派遣されるという空気をなんとなく感じていたので諦めていました。だから特に国際協力の機会はなかったです。

安江:そうだったんですね。確かに最初は仕事を覚えるだけで大変だと思いますが、チャンスに恵まれず残念でしたね。

松原:で、仕事を始めて3-4年すると進路について考える時期になって、このまま救急で続けていていいのかな?と考えるようになり、国際協力への気持ちがまた高まってきて調べ始めたんです。

安江:数ある団体の中、ジャパンハートを選んだきっかけは何だったんですか?

松原:まずは英語スキルの条件がなかったことが大きかったです。あと、国際協力は保健活動が多いけど、臨床をやっているのが魅力でした。

カンボジアではどんなことをしましたか?

安江:ジャパンハートの長期研修に参加するか迷っていたとき、一度私の相談サロンに来てくださいましたね。その後勇気を出して一歩踏み出されたわけですが、行ってみてどうでしたか?どんなことをしましたか?

松原:ジャパンハートのメディカルセンターでは、カンボジア人スタッフと一緒になって医療活動をしていました。病棟では創傷処置や退院指導など、オペ室では直介、間介をしました。日本での所属は救急だったので患者さんを受け持つのは少しの間だけだったのですが、カンボジアでは入院から退院までずっと受け持ちましたし、休みの日も傷の状態を見に行ったりしたのが今までと違ったところですね。あと、退院の判断も自分でしたり、日本で求められるより広い範囲で判断をする場面が多いというのも違いました。とても勉強になりました。

安江:確かに救急だと特に違いが大きいでしょうね。患者さんを受け持つのは、搬送されてから退院するか病棟に移るかまでの、数時間から数日のみですからね。

松原:日本より多くの場面で考えが求められて、責任を持たなきゃいけないと感じました。そう、責任が重かったです。でも…自分の中で責任というものの考え方が軽かったんです。

安江:責任について考えさせられる何かがあったんですか?

松原:帰国する直前に、先輩に怒られたんです。怒られたというと語弊があって違うんですけど…。先輩から怒ってもらい、考えさせられたことが沢山ありました。

安江:何か指導とかアドバイスというものがあったんですね?

松原:はい。「責任についてもっと考えてほしかった」と言われて。ほんとに帰る直前だったので改善する猶予もなく、だから悔いが残ってて。カンボジアでの経験を良く思いたいけど、そう思いきれなくてもやもやしていて…。

自分の性格もいけないんです。前向きに考えてこれからにつなげればいいことなんですけどね。帰国する直前にそんな出来事があったからか、私はカンボジアで何をしてきたんだろう?役に立てなかった…。そんな風に思ってしまうんです。

活動を通して考えさせられた責任感とは?

安江:責任について指導されることになった原因ってなんですか?聞いてみたいんですけど話せますか?

松原:…。ここで話していいかわからないですけど…。私たち数名の日本人スタッフが帰国する時期になったので、カンボジア人スタッフが送別会を開いてくれたときのことです。現地でお酒を飲むときは責任者に確認して了承を得てから飲むという決めごとがありました。なのでその日も確認を取ってお酒を飲んでみんなで別れを惜しんでいました。ところが買ったお酒が余ってしまったので一人のスタッフが宿舎に持って帰ったのですが、その姿を先輩が見て、指導があったというできごとです。

安江:宿舎に持ち込むことまでは許可が出ていなかったんですね?

松原:もともと宿舎に持ち込むのはだめな決まりだったので。それで、そのできごとがあってから帰国までの残りの数日間病院へは出禁になってしまったんです。

安江:宿舎に持ち込んではいけない決まりは知っていたと思うので、余ったお酒を飲むつもりではなかったんじゃないですか?

松原:そうです、送別会の場所で処分することができなかったので、仕方なく持ち帰ったんです。

安江:それって説明すれば理解してもらえることじゃないですか?

松原:私もそう思いました。出禁になるほど重大な問題だとはそのときは思っていなかったので。でも先輩は、持ち込む姿をカンボジア人スタッフが見たらどう思うの?などと問いかけ、なんとなく、今回のことだけじゃなくてこういう気持ちのゆるさについて言及しているのかなと思いました。たぶん私は上の人の気持ちになって考えることができていなかったんだと思います。

安江:先輩は責任者として背負っているものがあったので厳しく指導されたかもしれませんね。でも松原さんにメンバーシップだけじゃなくそろそろリーダーシップを学ぶ機会を与えたかったというふうにも考えられるんじゃないでしょうか。

松原:私もそう考えました。先輩は私に「課題がある」という伝え方をして、問題について明言はされなかったんです。もやっとしたまま帰国したんですが、それで自分なりにすごく考えて本当の正解はどうかわからないけど、スタッフをまとめるポジションに就いて実際に責任感について学ぶとよいのではないかと、実は最近思うようになりました。今まではメンバーとして目の前の仕事を懸命にこなすことしか考えられていなかったので。ほんと何も考えてなかったので。

安江:前に進めないと言われてましたが、次の進路ちゃんと考えてるじゃないですか^^

59360377_673553319744639_2752857621923889152_n

課題をクリアするために適した次の就職先は?どんな自分になりたいですか?

安江:するとこの先の就職は昇進基準が明確なところだと努力しやすいかもしれませんね。

松原:看護師としての活躍の場はいろんな場所があるので悩むのですが、総合病院に行きたいかなと考え始めています。

安江:もし上の立場になったら、どんな自分になりたいですか?

松原:そうですね、頼られる人になりたいですね。必要だと思われる人になりたい。

安江:誰かモデルになるような人は今までにいましたか?

松原:カンボジアで一緒に活動したK先生でしょうか。患者さんのこと、カンボジアのプロジェクトのこと、日本と行き来するスタイルなのに一番把握されてて、みんなのまとめ役でした。でも“偉い人”という風な威圧的な感じじゃなくて、すごく喋りやすくて身近な方でした。

安江:お話したことはないですが私もK先生のことは存じ上げています。あんなに華奢なのにすごく背中が大きく見えたのを覚えています。ただならぬオーラがありましたね。

松原:カンボジアに行って大して役には立てなかったですが、なりたい自分を見つけられた気がしています。私はつい人と自分を比べてしまって自信を持てないところがあるので、自分自身をちゃんと確立して認められるようになりたいですね。

安江:今日素直にお話していただいたことで、もやっとしていたことにしっかり向き合えたのではないでしょうか。これで次に踏み出せそうですね。

松原:帰国して数ヶ月たった今も派遣で仕事をしていて、正社員じゃないから余計に、今も海外で活動している人々のことを思うと、あんなに頑張っているのに自分は立ち止まっているなって感じていました。次を考えていかないといけないですね!

また海外で活動したいですか?

安江:また海外に行って活動したいですか?

松原:もう一度カンボジアに行きたい気持ちはあります。カンボジアの方に与えてもらったものがとても大きくて、ずっとつながっていたいと思うんです。必ずしも現地で活動できなくても、寄付でもいいですし、役に立ちたいです。役に立てるまでやりたいです。今回は何も大したことをできていない感があるのですが、経験をすることでこれからの目標を見つけることができたので、まずはよかったと思います。

安江:そうです。結局その連続だと思うんですよね。課題を見つけてクリアして成長し続ける。毎回不完全でいいんです。

今日は本当は話しにくい内容だったかもしれませんが、貴重なお話をありがとうございました。

松原:こんなお話で良かったですか?すみません、ありがとうございました。

58864875_2115838498511675_6836992472376147968_n

ボランティア活動を通して何に気づいたか

海外でボランティア活動を終えた人が、帰国した後の進路について悩むというお話はよく聞きます。私が思うのは、ボランティア活動を通して「何に気づいたか」をよく振り返ることが次のフィールドを決めるのに重要だということです。あまり向き合いたくない事実もあると思いますが、そういう出来事こそ自分の中でよく内省し、あるいは話せる相手に話して、弱みと向き合うことが大切です。すると次の場所は見えてきてステップアップすることができますし、活動中に関わった人へのなによりの感謝の表現になるのではないでしょうか。

そしてもう一つ、これから海外でのボランティア活動に挑戦しようとしている人に伝えたいことがあります。海外に行ったら海外らしい何かを身に着けてこなければいけないとか、帰国後は海外らしいことを活かせる場に行かないといけない、などとプレッシャーを感じている人によくお会いしますが、松原さんのお話でもわかるように、海外で何に気づくか、何を学ぶかというと、案外日本でも学び得たような自分自身の内面のことだったりします。

行ってみるとよくわかると思いますが、海外という場をあまり特別な場所と思わなくていいです。今あなたが何年も同じ職場で仕事をしていて成長率が低いと感じるなら、異なる生活環境、異なる人間関係の中に身を置いてみるのがいいかもしれません。その一つの選択肢がたまたま海外かもしれないというくらいの気持ちでいいです。当たり前のように日本と海外を行き来するようなボーダーレスな社会になることを期待しています。私たちの手で作っていきましょう。